DX認定制度とは?取得するメリットや方法、受けるべき企業について

2022.12.02

政府では企業のDXへの取り組みをサポート、推進する目的で「DX認定制度」を設けました。現在では多くの企業がDXの重要性を認識し始め、取り組みを行っていますが、一方でDX認定やDX化の実現が難しいと考えている事業者も少なくありません。

そこで今回は、DX認定制度について具体的な内容や認定基準について解説します。DX認定制度を受けることのメリットや、取得までのプロセスなども紹介するので、参考にしてみてください。

DX認定制度とは?

「DX認定制度」とは、国が示す指針を基準にして、デジタル化による収益向上やビジネス変革を狙う施策の準備ができている企業を認定するものです。

2020年5月に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づいて作られた認定制度で、企業規模に関わらずすべての事業者が対象となっており、1年を通していつでもオンラインで申請が可能、無料で行われています。

DX認定の申請には、後述する「デジタルガバナンスコード」と呼ばれる認定基準が設定されており、DXの取り組み内容に盛り込まれていなければなりません。

この制度はIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が窓口となって事務局を設け、各種問い合わせから申請受付、審査までを行い、経済産業大臣が認定しています。

DX認定制度を受けるメリット

DX認定を受けると、IPAのWebサイト「DX推進ポータル」の[DX認定制度 認定事業者の一覧](https://disclosure.dx-portal.ipa.go.jp/p/dxcp/top)リストにDX認定企業として企業名が掲載されます。それだけではなく、DX認定を取得することで次のようなメリットが考えられます。

企業の社会的認知やブランド価値向上に寄与する

認定を受けたDX事業者は、名刺やWebサイト、広告などにDX認定ロゴマークを利用することができます。DX技術を活用したビジネスに取り組んでいることを広くアピールできるほか、国の認定を受けることで社会的な信用を高めることが可能です。広く認知されるようになれば、企業ブランドの価値向上にもつながるでしょう。

DX取得までに自社の現状と課題を見直せる

DX認定制度の申請プロセスには、自社を自己診断するチェックシートを記入し、事業の現状や課題と向き合うことが必要です。ビジネス改革に重要な現状把握や情報収集、課題の洗い出し、分析などを行うことで、自社の状況を理解しDXによる企業成長を目指すための戦略を立てやすくなります。

税額控除による支援措置が受けられる

DX認定制度を取得した企業は「DX投資促進税制」が活用できるようになります。「DX投資促進税制」は、デジタル環境を構築するための投資に対して5%または3%の税額控除、もしくは30%の特別償却を受けられる制度で、一定の要件を満たした上で計画書を作成・申請することができるものです。

中小企業の場合は、DXに向けた設備投資などに対し、日本政策金融公庫から基準よりも低い利率で融資を受けられる措置もあります。ほかにも金融機関からの融資時に、普通保険とは別枠で信用保証の追加や拡大を受けることができる「中小企業信用保険組合の特例」を受けることも可能です。

DX銘柄の応募資格が得られる

経済産業省では、東京証券取引所に上場している企業を対象に、デジタル技術を活用しながらビジネスモデルの変革にチャレンジしている事業を評価・選定する「DX銘柄」を設けています。社内でのITやデータ活用にとどまらない、市場競争への価値を見いだされるものとして、投資家や取引先、顧客、金融機関など企業に影響を及ぼす関係者からの高い評価を受けることができるものです。DX認定を取得すると、DX銘柄の応募資格が得られます。

デジタルガバナンスコードとは

DX認定制度では「ガバナンスコード」と呼ばれるDX化実現に向けた企業の取り組みを選定・評価するための指針を公開しています。DX推進の取り組みについて実践するべき事柄をまとめたもので、構成は主に次の6つの項目です。

・経営ビジョン・ビジネスモデルの方向性を示す。
・デジタル技術を活用した企業の戦略を立案する。
・DX化を目指す組織・人材・企業文化を作る。
・ITシステム・デジタル技術を活用する環境を整備する。
・戦略の効果に関わる指標を決定する。
・セキュリティ対策を含むガバナンスシステムを策定する。

これらの内容の詳細を決定し、DX認定制度の申請チェックシートに盛り込むことが求められます。

DX認定制度は、どのような企業が受けているのか?

DX認定制度は、企業規模に関わらずすべての事業者が対象となっており、IT、通信事業のみならず建設、製造、金融、サービスなど多種多様な業界・業種が認定を受けています。認定を受けると「DX推進ポータル」に企業名・代表者名・住所・認定日などが随時公表され、各社の申請書も確認することが可能です。他社がどのような取り組みを行っているか、参考にしてみると良いでしょう。

DX認定の基準

ここで、DX認定制度の位置づけを確認しておきましょう。経済産業省では、DX推進状況を4段階に分けて定義しています。

・DX-Ready以前 これからDXに取り組む事業者
・DX認定事業者(DX-Ready) DXの準備が整っている事業者
・DX-Emerging企業 優れたプラクティスとなる(将来性が見込まれる)事業者
・DX-Excellent企業 優れたプラクティスに加え、優れたデジタル活用実績も現れている事業者

DX認定は2段階目の「DX-Ready」に該当し、企業が目指すDXの方向性や柱となる考え方を決め準備ができた、もしくは開始した段階で認定を受けることができます。つまり、DXが実現されたかどうかではなく、取り組むかどうかを評価するため、申請しやすい制度と言えます。

DX認定取得のプロセス

DX認定の取得は、次のようなプロセスが想定されます。

・デジタル技術を活用した経営ビジョンを策定
・DX戦略、体制や組織、人材確保、ITシステムの整備などを検討、具体化
・DX推進の管理体制の構築、目標達成のためのKPIを設定
・経営者がDX戦略と推進状況を社内外に公表
・IPAの「DX推進指標」による自己分析を行い課題把握する
・サイバーセキュリティ対策をまとめる

これらのステップを経てDX認定の申請を行います。ステップごとに取締役会などの承認を得て公表していくことも求められるでしょう。

審査から取得まではすべてIPAを介して行われ、「DX認定制度 認定申請書」「DX認定制度 申請チェックシート」などの書類をダウンロードします。書類に記入、必要に応じて補足資料を用意し「DX推進ポータル」から申請してください。

認定されるとDX推進ポータルの「DX認定制度 認定事業者の一覧」に掲載されます。申請から認定までの期間は約4か月を目安として考えておきましょう。申請までの詳しい流れはIPAのWebサイト[DX認定制度 申請要項](https://www.ipa.go.jp/files/000086670.pdf)で確認することができます。

まとめ

DX認定制度を設けた背景には、2018年に経済産業省が発表したDXレポートの中で、IT、デジタル化の後れや停滞による企業存続の危機、経済損失の懸念などを「2025年の崖」として広く訴えたことにあります。しかし大企業の多くは取り組みを開始しているのに対し、中小規模企業には課題が多い現状がありました。

DX認定制度は、この格差をなくして多くの企業がDXに取り組める体制の整備を目指すために設置されたものです。

自社の現状を見直し、課題解決やビジネスモデルの創造による企業成長のためにも、DX認定に取り組んでみてはいかがでしょうか。

(画像は写真ACより)