データ基盤を作って、ビジネスを見直す。

2022.07.14
Market cart vector created by macrovector - www.freepik.com
Self-service supermarket full shopping trolley cart with fresh grocery products and red handle realistic vector illustration

( トップの画像 : Market cart vector created by macrovector – www.freepik.com )

ハーバード・ビジネス・レビューの、「A Better Way to Put Your Data to Work(データに仕事をしてもらう良い方法)」という記事では、データを扱うアプロ―チについて、提案をしています。

( https://hbr.org/2022/07/a-better-way-to-put-your-data-to-work )

マッキンゼーでもこの記事を使って、別の記事があります。マッキンゼーの記事の方は「How to unlock the full value of data? Manage it like a product(データを100%活用する方法は?データを商品として扱え!」というタイトルになっていて、「データ」と「商品」が似ている、というところに力点を置いてあります。

( https://www.mckinsey.com/business-functions/quantumblack/our-insights/how-to-unlock-the-full-value-of-data-manage-it-like-a-product )


記事では、「データへの投資は、短期間に結果を出さなければいけないのと同時に、急激に変化する市場、予測不可能な技術の変化、新しいデータの登場、データ量の急増、といった状態の土台にならなければならないため、非常に難しい」、と述べた上で、データを扱う時の失敗例として、2つの例を引き合いに出しています:

1つ目を「ビッグ・バン戦略」と呼んでいて、データを扱う専門チームを置いて、全社的なデータ基盤を作るやり方。全社的に統一した基盤を作ることに重点を置いてしまい、現場サイドとの乖離が大きく、使い物にならないというケースが紹介されます。

2つ目を「草の根戦略」と呼び、各担当や部署が必要なところから必要なデータを引き出し、必要な形に成形し、利用するという状態を指しています。各所がそれぞれにデータの抽出を行うため、重複した作業が発生したり、とても似ているけれども少し違うデータが作成されたりという状態になってしまうことで、データの再利用が難しく、現場ごとに異なるデータを参照するケースが発生しやすくなります。

「ビッグバン戦略」は、中小企業ではあまり当てはまらないかも知れません。どちらかというと「草の根戦略」による弊害が各所に発生しているのが、現実ではないでしょうか。

部署によって微妙に違いが出ていたり、同じようなことを複数の人がやっていたり、というのは、よくある現実だと思います。

そして、これらの失敗例に対比して、「データを商品として扱うことで、こうした困難な状況で成果をだしている企業が多い」と述べています。


Business performance analysis with graphs

「商品として扱う」というイメージは、記事中の図を見て頂くと分かりやすいですが、

  • 各現場で必要なデータを、データベースから引き出して利用している

状況から、

  • データを現場が利用する「商品」、ととらえ、現場と調整しつつ「商品」をデザインして、全社で利用可能なものにする

ようにすることだ、というようなことが書いてあります。

ここでいう「商品」としてのデータとは、

全社で使える品質の高くて、利用も簡単な、データのまとまりで、様々なビジネス課題に応用できる、例えば顧客について、各部署が持っているデータを統合して、全体像を表現したもの…

とあり、つまり、全社的に散在するデータをあつめて、対象となる事象(顧客、商品、など)についての、360度見渡せるような情報として、一つのデータベースにまとめたもの、というイメージです。

「草の根戦略」では、それぞれの現場が各々のデータを探して利用していたのに対して、「商品としてのデータ」があると、「顧客データ」を見に行けば、全社で同じ情報がすぐに手に入る、ということになります。

そして、この「商品」であるデータは、一般の商品同様、必要に応じてモデルチェンジしたり改善したりする、と説明されていて、自社のビジネスが成長するにつれて、商品も成長していくイメージで説明されています。


しかし、データを「商品」として扱うと、何故データの活用が成功するのでしょうか。

別のアプローチから考えてみます。

株式会社データ総研のこちらの記事データマネジメントについての記事、同社の『DXを成功に導くデータマネジメント』は、データ・ガバナンス、データ・マネジメントについて分かりやすく説明をしてあります。

本書の中で、これから先のビジネスモデルは、自社中心のリソースを如何に活用・流通させるか、ではなく、

顧客の課題をとらえ、その解決に向けて、企業自身が素早く変革できる

(P.27)

必要があると主張しています。

つまり、顧客の課題に合わせて、どのような商品を提供するべきか、常に変化をとらえて変わっていかなければならないということです。

自社にあるリソースを探しているだけでは、変化を促すことは出来ず、既存のビジネスに拘泥してしまいます。一般的な商品と同じように、常に新しい環境へ適切に対応出来ていないと、お客様に貢献することが出来なくなります。

『DXを成功に導くデータマネジメント』

データを商品として扱う、という冒頭の議論と合わせて読むと、

顧客の課題をとらえ、その解決に向けて、企業自身が素早く変革しながら、提供する商品を成長させる

ことが必要だと、解釈することが出来ます。


失敗例として取り上げられている、「ビッグ・バン戦略」でも、「草の根戦略」でも、企業自身が素早く変革しながら、組織的に商品を成長させる、という視点が欠けているということでしょう。

つまり、「データ・ガバナンス」や「データ・マネジメント」とは、単にデータを管理することではなく、顧客中心に、企業が変革し、提供する価値を変えて行くことが前提にあります。

ですから、データ基盤を構築するということは、自社のビジネスそのものを考え直すことなのだと言えます。データ・マネジメントがDXの文脈で語られることが多いのも、頷けます。

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