
クラウドストレージは Google Drive、DropBox、One Drive、など、多くの選択肢があります。クラウド上でファイルを管理することで、インターネットとブラウザさえあれば、何処に居ても自分のファイルを使うことが出来ます。誰でも自分にあったクラウドストレージを使っている時代ですが、会社でのクラウドストレージの導入がまだだったり、見直しを検討しているところも少なくないのではないでしょうか。
この記事では、オープンソースのファイル管理・コラボレーションツール、ネクストクラウド(Nextcloud)をご紹介して、特徴と現時点ではまだ不足している点などを、ご紹介したいと思います。
コミュニケーションツールとファイル

テレワークやリモートワークが急速に広まった中、コミュニケーションツールとしてSlack、Teams、Zoom、などのソリューションを使う機会が増えました。毎日のようにこれらのツールを使っている企業も少なくないでしょう。当然、コンピュータを使ったコミュニケーションでは、ファイルのやりとりも頻繁に発生します。
チャットルームやスレッドの中でファイルをアップロードしたり、コラボレーションツールで共同編集する機会も増えたと思います。
コラボレーションツールとファイル管理
また、社内のメンバや顧客とインターネットを通じたコラボレーションが可能になりました。ローカルファイルと異なり、クラウド上のファイルをコラボレーションツールを通じて同時に参照・編集することが可能になりました。
便利なコラボレーションツールが既に多く存在します。個人で使う分には無料で十分使えますが、企業で使うには、有料プランを検討する必要があります。現在の料金設定を比較してみました。
クラウド上のオンラインストレージ/コラボレーションツールの料金
One Drive | 548円/月・ユーザ |
Google Drive | 680円/月・ユーザ |
DropBox | 1,250円/月・ユーザ |
Box | 1,710円/月・ユーザ |
どれも優れたUIや多くの機能を備えたツールなので、決して高い金額ではないかも知れませんが、多くの中小企業にとって、やはり二の足を踏まざるを得ない金額です。そのために、一部のユーザにのみ導入する、ということも考えられますが、デジタル資産の恩恵は、全社で共有しないと、その効果が発揮出来ないものです。
「DX により、ビジネスモデルや業務プロセスを変革し、企業文化を変革していくためには、その変革を実行し、根付かせるための経営としての『仕組み』を明確化 し、全社で持続的なものとして定着させることが必要である。」
『経済産業省:「DX 推進指標」とそのガイダンス』
全社で導入するには、コストにも限りがあります。また、難しいツールでは、社員もなかなか慣れるまで時間がかかります。
その点、ネクストクラウドは、コストを抑えて導入を検討出来て、使いやすいツールです。
それでは、ネクストクラウドのご紹介に入りたいと思います。
ネクストクラウド ~ Nextcloud

ネクストクラウドはサーバさへあれば無料でも利用できる、オープンソースのグループウェア/コラボレーションツールです。主な機能として:
- ファイル共有機能
- チャットとオンライン通話のできる「トーク」
- カンバンツールに似ている「デッキ」
- メール
- カレンダー
などがあります。
Google や Microsoft 、その他多くのエンタープライズ向けソリューションがありますが、ネクストクラウドなどオープンソースのソリューションは、サーバを自社で選び、ユーザコントロールも自社でできます。料金だけではなく、自社のデータ資産がどこにあり、どのように管理されているかを自社で制御できる点も、特に中小企業にとっては、安心できる点だと思います。
ファイル共有、バージョン管理(履歴管理)
ネクストクラウドは、コラボレーションツールの中でも、ファイル共有に強みがあるソリューションになります。社内のファイル管理が煩雑になっていたり、ファイル共有が複雑になってしまっている場合、ネクストクラウドでクラウドストレージを導入しつつ、ファイル共有の見直しも整理出来るかもしれません。
また、ネクストクラウドでは、ファイルのバージョン管理も備えてありますので、誤って更新しても、昔の版に戻すことが出来ます。
ファイルを複数のメンバで同時に編集をすることも出来ますし、GoogleやMicrosoftのツール同様、ワードプロセッサやスプレッドシートにあたるツールも、追加でインストールし、共同編集を行うことも可能です。
まだファイル共有のソリューションを導入出来て居ない、または見直したいと考えている中小企業に、一度試してもらいたいツールです。
充実の機能、一番の強みはファイル管理と共有機能
ネクストクラウドのオフィシャルサイトにも比較表があります。この表ではNextcloudがいかに優れているかを強調してあります!でも、勿論、至らないところも実際にはあります。
私の感じでは、特にグループウェアとしての側面は、改善の余地が多いですし、コミュニケーションツールとしても、SlackやZoomなどの優れたツールがあるため、ネクストクラウド一つあれば、グループウェアやコミュニケーションツールが不要かというと、そういう訳にはいかないと考えています。
しかし、オンラインのファイルストレージとして、出来るだけ簡単に、出来るだけ安全に、出来るだけ生産的に、ファイル管理をするための選択肢としては、十分に検討出来ると思っています。
以下、ネクストクラウドの機能は「アプリ」として追加でインストールが出来ますが、基本的なアプリについてご紹介します。
ファイル

Google Drive などと同じ、クラウドでのファイル管理ツールです。修正履歴も残るため、誤って手を加えても過去のバージョンへ戻ることが出来ます。
オンラインストレージですので、他のユーザとファイル共有も簡単に出来ますが、いくつかの選択肢から、共有方法を選ぶことができます。
- ネクストクラウド内の他のユーザと共有する
- 社内で他のメンバへファイルを共有するようなイメージです。
- ネクストクラウド内の同じグループのユーザと共有する
- 個人ではなくグループと共有出来ます。同じ部署内でのファイル共有などに使えます。
- ファイルの共有リンクを使って外部のユーザと共有する
- お客様への提案書など、社外の人へファイルを渡す場合に使えます。
また、ファイル共有する際にオプションとしてセキュリティレベルを制御出来ます。
- パスワード保護
- 共有する期限を設定
ファイルの共有相手が、該当のファイルを参照したかどうかを、確認することも出来ます。資料を相手がダウンロードしてくれたかどうかをすぐに確認出来ます。

さらに、ファイルに関して「コメント」を加えることができます。「コメント」は、共有相手とのチャットのようにファイルについての会話を開始出来ます。また、次に紹介する「トーク」で、チャットを開始することも可能です。
クラウド上にあるファイルでも、オフラインで作業したいこともあります。デスクトップアプリ、スマートフォンアプリを使って、クラウド上だけでなく、手元のコンピュータと同期を取ることも出来ます。
コラボレーションツールとして使いたい場合には、別途インストールが必要になるが、Officeツールや作図ツール(Draw.io)もファイル機能と連携して使うことが出来て、複数のユーザと同時編集することも出来ます。
トーク(チャット機能)

「トーク」アプリは、シンプルなチャット機能と、通話機能です。SlackやTeams など、ポピュラーなコミュニケーションツールに比べると、機能的には見劣りします。具体的にはこの後「不足している機能」として触れておきます。
しかし、ネクストクラウドでは、コミュニケーションそのものよりも、データ(ファイル)についてのコミュニケーションを重要視しています。ファイルの詳細情報のタブから、トーク上でのチャットや会話を開始することが出来ます。会話の中でファイルの共有をするのではなく、ファイル共有をして、その上で必要ならばコミュニケーションを取る、といった使い方のイメージになります。
また、ファイルや、次に紹介するカンバンボード機能のタスクからは、「コメント」機能も使えます。「コメント」機能は共有しているメンバ間のコミュニケーションに使えて、ファイルに紐づけて保存されていきます。そのファイルについて、どのような議論をしたのか、複数のスレッドに分かれてしまうことなく、まとめて管理出来ます。
「コメント」と「トーク」機能の使い分けが曖昧に感じますが、ファイルやタスクについては、「コメント」が便利だと思います。「トーク」によるチャットの良さは、ネクストクラウドにあるファイルをすぐに共有できるところです。チャットで共有したあのファイルがどこにあったか、ということが、ネクストクラウドの場合、防ぎやすくなるでしょう。
不足している機能
- 書式設定(箇条書き、引用、表、色付けなど)
- 返信によるチャットメッセージのグルーピング
デッキ(カンバンボード)

「デッキ」は、カンバンボードとして使えるタスク管理ツールです。デッキ(カードの山)の上に、カード(タスク)を積んでいくイメージの名称になっています。
カンバンボードとしての機能は非常に限定的なため、本格的なカンバンの運用には向かないかもしれません。反面、カード(タスク)作成は件名入力のみでもできるため、やらなければいけないことをメモするような感覚で、カード(タスク)を作成していけます。

カンバンボード毎にタグを設定出来るので、プロジェクト毎に必要なタグを管理できます。カンバンボードはコピーも出来るので、同じタグが必要な場合は、コピーして作成することも出来ます。
また、ネクストクラウドはファイル管理がメインのツールですから、タスクにファイルを添付して関連付け出来ることも勿論出来ます。
さらに、「ファイル」と同じように、カード(タスク)の詳細情報タブから、「コメント」機能を使うことが出来て、タスクについてのメモや会話をまとめて残すことが出来ます。
カードの詳細から、「トーク」内でチャットを開始することも出来ます。ここでも、「ファイル」と同じで、「タスク」に関係したコミュニケーションをまとめて紐づけておく、という使い方が出来ます。
不足している機能
- カンバン機能としては、「完了」ステータスの管理がないため、カードを「アーカイブ」または「削除」しないといけない。進捗率も管理出来ない。
- タスクの期日設定はできるが、期間での日付を設定出来ない。タスクの詳細情報やコメントとして残すことになる。
- カンバンボード毎にタグの管理が出来るので便利だが、タグで検索することが出来ない。
検索

コラボレーションツールの大切な機能は、「検索」機能でもあります。日々の業務で作成されるファイルや、コミュニケーションの記録は、後から再利用出来て初めて意味を持ってきます。ネクストクラウドでは、詳細な検索条件を指定することは出来ませんが、ファイル名、コメント、チャット、メール、カレンダーなど、ネクストクラウド内の情報を一括で検索可能です。
前掲の「比較表」では、この全てのアプリでの全文検索が、一つの特徴のように比較されています(「UNIFIED SEARCH」の欄です)。確かに全文検索は出来ますが、逆に言うと全文検索しか出来ません。ですので、下記、「不足している機能」に挙げたように、特にメール機能においては、必要なメールを検索するための機能が欠けていると言わざるを得ません。
「グループウェア」としてネクストクラウドを見ると、使いやすさとシンプルさを追求しているために、一部の機能がビジネス要件を満たすには弱すぎると言わざるを得ないでしょう。
不足している機能
- メールの検索が細かく指定できません。from や to での絞り込み、件名のみでの検索、タグでの絞り込み、などがないため、業務によっては、ネクストクラウドのメールは使いものにならないことがあり得ます。あくまで 「ネクストクラウド上でもメールが参照出来る」、という程度のとらえ方にしないと、全社的に導入をすると、不評を買うことになると思います。今後、バージョンアップで使い勝手が良くなることを期待しています。
ネクストクラウド ~ Nextcloud のデモ体験

以上、ネクストクラウドの紹介をさせて頂きました。短い中なので分かりにくかったかも知れませんが、良い点と悪い点を出来るだけ拾って紹介したつもりです。
ファイルを自社のクラウド上で管理したい企業にとっては、導入もそれほど難しくなく、使いやすいツールです。逆に、ワークフローやリッチなチャット機能が重要な企業にとっては、物足りないツールになると思います。
一度は使ってみないと、判断出来ない!という方へ、デモユーザで使えるネクストクラウドの環境を用意しました。是非一度、使ってみて、ご自身でご判断下さい。デモユーザは、ファイル管理機能とデッキのカンバンボードが使える状態です。
※デモユーザは共有です。間違って大切なファイルをアップロードしたりしないようにご注意願います。
ネクストクラウド の導入は、オープンソースのツールをサーバに導入したことがある企業様にとっては、比較的、簡単です。
ご経験がない、または、時間がない、という企業様であれば、弊社でお手伝いさせて頂きます。
是非、以下のお問合せフォームでご連絡下さい。